話題沸騰中!【海賊】ワンピース×NFTの法律&税金

話題沸騰中!【海賊】ワンピース×NFTの法律&税金

記事作成日 2022/03/02    記事更新日 2022/06/22

NFT

2021年9月25日に、週刊少年ジャンプを出版する集英社が、 マンガアート販売事業「集英社マンガアートヘリテージ」にて、 尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』の作品をNFTと組み合わせて販売することを発表し、大きな話題を呼びました。

多くの方にとって、NFTは未知の部分が多くあると思いますので、 弁護士・税理士の専門家の観点から、ワンピース×NFTを紐解いていきます。

ワンピースのNFTとは?

集英社マンガアートヘリテージとは、「マンガを、受け継がれていくべきアートに」というビジョンのもと、開始された事業です。 紙面の原画は保存が難しく、また雑多に段ボールに詰め込まれ、 作家の事務所に置かれているままのケースが多くなっていました。

そこで、原画データをアーカイブし、マンガをアートにすることで、 貴重な原画を後世に残す取り組みを、この事業で行われています。

例えば1970年代に描かれた『ベルサイユのばら』のような作品は、 紙の劣化や退色が進みはじめていますが、 高解像度デジタルカメラを使って取り込んだ原画を、 描かれた当時の資料をもとにデジタルレタッチし、作画当時の状態への復元を行なっています。

また『ONE PIECE』を含む作品のカラー原画は、染料系のカラーインクで描かれていることが多いのですが、 このインクは紫外線に非常に弱く、退色が進みやすい特性を持っています。
よりよい状態の時に撮影されたデータをもとに、こちらも適切なデジタルレタッチを行なっています。

このようにアーカイブされたデータを、ファインアート紙や、 現在では希少な「グムンドコットン マックスホワイト」に 耐光性インクでプリントすることで、 美術館等に展示し長期収蔵に耐えうる「マンガアート」作品への昇華が実現されました。

しかし、単に品質が良いというのみでは、 世界のアート市場で認められることは難しいです。正規品であることの証明や来歴を永続的に記録し、 追跡できることが非常に重要になります。 模造品現物の作品と紐づけて、NFTとしてブロックチェーン証明書を発行することで、 正規品であること、所有権を保有していることの証明が可能となりました。

3種類の商品分類

集英社マンガアートヘリテージでは、以下3つのレーベルで作品を販売しています。

①「REAL COLOR COLLECTION」

原画のデジタルアーカイブデータを、美術館収蔵の作品に使用される コットン100%のベルベット・ファイン・アート・ペーパーにプリント。 コミックスカバーなどで使われるオフセット印刷の領域を超える色彩表現領域であることはもちろん、紙の原画を超える耐光性・耐久性を持った作品となる。  

②「THE PRESS」

原画のデジタルアーカイブデータを、 コットン100%のアート用紙「グムンドコットン マックスホワイト」に、 1960年代に製造されたドイツ製のハイデルベルグ印刷機により強い印圧でプレスする。 印刷面が凹み、物理的なインパクトのある唯一無二の表面となり、 他の印刷方法とは一線を画す作品となる。 マンガ作品+印刷技術をも後世に伝えていくことを目的とした作品。  

③「THE ORIGINAL」

作家自らが描き下ろした、世界で1点のみの作品となり、 マテリアル、表現方法、サイズなど多岐に渡ります。 全ての作品は、ブロックチェーン証明書サービス「Startbahn Cert.︎」に登録されています。 ICタグシール添付のブロックチェーン連携販売証明書を同梱されており、 ICタグシールをスマートフォンでスキャンすることで ブロックチェーン証明書の情報が閲覧できます。

法律的には、どんな点に注意すればいい?

NFTの権利関係を正確に把握するためには、 少なくとも下記の3点について注意する必要があります。

⑴ 利用規約が定める権利義務を正確に把握すること
⑵ 物の所有権と著作権の違い
⑶ フィジカルアートとNFTが別物であること

まず、⑴について解説します。
インターネットでNFT作品を購入する場合、 インターネット上のプラットフォームや D2Cのウェブサイトなどで購入することになりますが、 その際にはそれらのウェブサイトの「利用規約」が販売している商品を どのように取扱っているかを正確に確認する必要があります。

たとえば、集英社マンガアートヘリテージの場合 ※ その「利用規約第13条(本商品)について」において 「本商品は、家庭用および個人用としての使用のみが認められています。

会員は、次条の定めに従って本商品を転売・譲渡する場合を除き、 利益を得る目的で 本商品を使用(展示することを含みますがこれに限りません。)しないことに同意します。」 と規定されています。 ※集英社マンガアートヘリテージ・「利用規約」・https://help.mangaart.jp/hc/ja/articles/900005000543(参照:2022-03-28

そのため、集英社マンガアートヘリテージで商品を購入した人は、 その商品を転売・譲渡することができますが、 その商品を展示して 入場料等の利益を得るといった行為はできません(利用規約第15条(禁止事項))。

次に⑵について解説します。
NFT商品を購入した人にその所有権が認められる場合、 「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分」 をすることができます(民法第206条)。

しかし、たとえ所有権者であっても、著作権を侵害することは許されないことに注意しなければなりません。

たとえば、集英社マンガアートヘリテージの利用規約においても、 NFTを購入した人は商品の所有権を取得することができ、NFTを転売・譲渡することが認められますが(利用規約第9条・第14条)、 一方で、「本商品・・・に関する著作権・・・は、 当社または当社に使用を許諾する第三者に帰属するものであり、 利用者は、本規約で定めた利用条件および著作権法で認められた 私的使用のための 複製の範囲を超えてこれらを利用することはできません」 と定められています(利用規約第17条(著作権等))。

したがって、購入した商品を印刷して不特定多数の人に配ったり、 データ化をしてSNS上で不特定多数の第三者に見せたりすると、 著作権法違反として著作権者から訴えられる可能性があるので 注意する必要があります(利用規約第15条参照)。

最後に⑶について解説します。
先ほど解説した通り、 集英社マンガアートヘリテージの利用規約においては、 NFT商品を購入した人(ここでは「Aさん」とします)には、 その商品の所有権が認められます。

しかしNFTの移転とは別に商品の現物自体が転売や譲渡などによって 他の人(ここでは「Bさん」とします)に渡った場合、 民法上はBさんにその商品現物の所有権が移転することになります。

その場合、NFTに記録された所有者が「Aさん」であるのに対して、 民法上は当該商品の所有者が「Bさん」ということになり、 必ずしもNFTだけでは所有権を証明することができなくなってしまう可能性があります。

なお、このようなNFTが権利関係とリンクしないという事態を防ぐため、 商品現物の所有権を移転する場合、商品を譲渡する人が 提携サービス(Startbahn Cert.︎)で所有権の移転記録申請をする という仕組みがあります ※(利用規約第14条参照) ※ StartbahnCert.・「作品を次の所有者に譲渡・販売する際の手順」・https://help.cert.startbahn.io/hc/ja/articles/360048942173(参照:2022-03-28)。

税務的には、どんな点に注意すればいい?

2022年2月現在、NFT固有の会計基準はまだ存在しません。

そのため、個別事例ごとに、既存の会計基準や類似ビジネスにおける 取引慣行と比較しながら検討する必要があります。

「NFT」というワードは、ややもすればブラックボックスと化している面がありますが、 取引しようとしている「NFT」が何を対象にしているのかしっかりと整理し、 会計処理を行いましょう。

本記事でご紹介しているワンピースNFTでいうところの「NFT」とは、 単に所有権を証明する機能のみ有していると考えられますので、 これ自体には資産性がありません。
そのため、「リアルアート部分」と「NFT部分」を分けて 資産認識する必要はないと考えられます。

「リアルアート部分」として、印刷された作品を資産計上する場合は、 一般的な絵画の会計処理を行っていきます。

NFTは現在非常に注目されている分野となりますので、 作品自体の将来の価格上昇による利益も見込めるものではありますが、 鑑賞用の美術品としてオフィスに飾ることも可能です。 こういったオフィス等で利用する美術品については、以下のような税制が適用されます。

・1点あたりの取得原価が100万円未満のもの 減価償却資産(工具器具備品)に該当し、8年間で償却する。 ただし、1点あたり10万円未満のものは消耗品として処理する。 青色申告適用法人もしくは個人事業主であれば、1点あたり30万円未満までのものは、 年間300万円を限度に全額経費計上可能。
・1点あたりの取得原価が100万円以上のもの 原則として非減価償却資産となり、経費計上は行われない

例えば、50万円で作品を購入し、自社の会議室等に3年間飾った後、 値上がりしたので100万円で売却したとします。 取得価額は50万円となり、絵画の法定耐用年数8年(定率法)で費用計上を行います。

【減価償却費】 1年目:125,000円 2年目: 93,750円 3年目: 70,312円 ・ ・ ・

3年経過時の簿価は500,000円-289,062円=210,938円 売却益(個人:雑所得、法人:益金) 1,000,000円-210,938円=789,062円 1点あたり100万円以上のものは、 時間の経過とともに価値が落ちるとは言いづらいため、 基本的に減価償却費を計上することはできません。 一方100万円未満のものは、 法定耐用年数に応じて 減価償却費を計上することができますので、 節税としての効果もあります。

まとめ

日本は世界的に誇れるコンテンツ大国ですが、 マンガが長期連載になればなるほど 大量の原画が未整理のまま放置されるという課題が生じています。 経年劣化に弱い原画を、デジタルデータとして保管し、 さらにそのデジタルデータをアート作品として昇華させることで、 後世に貴重な原画を残していく機運が盛り上がることが期待されます。

これまでデジタルデータに価値を付けることは非常に難しかったのですが、 ブロックチェーン及びNFTによるイノベーションで、 デジタルデータに新たな価値を与えることが可能になったことは、 非常に大きい意義があると言えます。 【本記事の法務部分について】 愛宕虎ノ門法律事務所監修 同社HPリンクはこちら インド・中国などアジア各国の国際法務/愛宕虎ノ門法律事務所 (law-t.com)

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