国税庁がいよいよ「副業規制!?」300万円の壁問題
記事作成日 2022/11/04 記事更新日 2023/02/06
国税庁が2022年8月に、
サラリーマンの副業について「収入金額300万円以下」の場合を
原則として事業所得と認めず雑所得と扱うという通達改定案を示し、
非難の声がかなり挙がりました。
結論としては、
10月7日、国税庁は改定案を撤回し、
「帳簿の有無」を重要な判断基準とすると表明しました。
つまり、国税庁としては売上300万円未満以下をすべて雑所得とし、事業所得とすることで
損益通算や青色申告控除などの節税を封じたかったのですが、
国民からの反対が殺到したため、通達改定を差し控えたという形になります。
国税庁がここまでの譲歩を行うのは異例です。
その背景に何があるのか、新しい基準の内容はどんなものか、問題はないのか、
今回の記事では解説しいきます。
改正案の問題点は以下の3つです。
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◆問題点1.税法の趣旨に反する可能性がある
まず、税法の趣旨に反する可能性があるということです。
すなわち、問題となった通達改定案の主眼は、サラリーマンが副業について
事業所得という所得類型を利用して無理筋な節税を行うことを封じる点にあります。
しかし、事業所得の定義については、最高裁が示した以下の基準があります。
「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、
かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」
(最判昭和56年4月24日)
この基準はある程度厳格なものなので、無理筋な節税を封じるのであればこの基準をきちんと適用すれば足り、
「収入金額300万円」という基準を重視するのは判例の趣旨に反すると考えられます。
◆問題点2.副業に対する過度の萎縮効果を生じさせる
第二に、サラリーマンが副業によって所得を増やそうとする努力に対し、萎縮効果を及ぼす可能性があります。
すなわち、サラリーマンが副業として起業を行う場合、
特にスタートアップの時期は売上が思うように上がらなかったり、
初期投資額や費用がかさんだりすることがあります。
そういう場合に、事業所得の損益通算や青色申告による特典を受けられないのは酷であり、
新たに事業を立ち上げようとする努力に対し、萎縮効果をもたらすおそれがあると考えられます。
◆問題点3.資産家ほど得をする可能性がある
第三に、資産家ほど得をする可能性があります。
すなわち、資産家が副業を行う場合は初期投資額を大きくでき、そのぶん、300万円を超える収入を得やすいといえます。
したがって、資産家ほど優遇され、租税の公平性を害する可能性があります。
2022年10月7日に公表された意見公募手続の結果に掲載されている意見のなかには、
これらの指摘と趣旨を同じくする意見もみられますが、他にも様々な指摘があり
今回の改定案がいかに問題の多いものだったかがわかります。
多くの指摘・批判を受け、結局、国税庁は、「収入金額300万円」の基準を撤回しました。
代わりに「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、
社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。」ということにしました。
これは、「収入金額300万円」などの杓子定規な判断ではなく、
上述の最高裁判例の基準をきちんとあてはめて判断するということを明記したということです。
代わりに、「帳簿書類の保存」がない場合には、雑所得と扱うとしています。
たしかに、帳簿書類をきちんとつけ、保存しているのであれば、最高裁判例の基準に照らし、
「反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる」ということで、
事業所得と扱ってよいケースが多いと考えられます。
ただし、要注意なのは、「帳簿書類の保存」はあくまでも最低限のことであり、
これさえあれば事業所得と認められるわけではありません。
あくまでも、「反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる」ことが重要です。
たとえ帳簿書類を作成し保存していたとしても、
事業所得という所得類型を利用して無理筋な節税を行おうとするのは、NGです。
この基準は総合的に判断するしかないものであり、「帳簿書類の保存」を軸とした今後のルールの適用と、
事例の集積に委ねられているといえます。
ここまでの改正について結論をまとめますと、以下のとおりになります。
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①色々議論があったが、副業の税務申告は結果的に今までと大きく変わらない。
「継続的に行っているか」
「収入は一定程度あるか」
「時間的金銭的リスクとそれに応じたリターンを負っているか」
によって事業所得か雑所得かが総合的に判断される。
②今後は、「帳簿書類の保存」が事業所得の認定に重要な要素になる。
③「副業収入300万円」は事業の判断に意識される数値だが、基準にはならない。
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事業所得による節税はサラリーマンでも出来る節税でしたので、
ここが変にふさがれない形になったのは個人的に良かったと思います。
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