同じ控除でも全然違う!?所得控除と税額控除の違い
記事作成日 2020/10/29 記事更新日 2023/02/05
所得税の申告書に記載のある「所得控除」と「税額控除」。この2つは、計算方法や節税効果、控除の種類までまったく異なる制度です。結論として、所得控除は控除額×税率分しか税金軽減できませんが、税額控除はそのままの金額を税金軽減できるということをまずは抑えておきましょう。
Contents
≪個人所得税の計算方法≫
個人所得税
『(収入金額-必要経費または各種所得控除-14種類の所得控除)×所得税率-税額控除』
そこで本記事では「所得控除」と「税額控除」について以下の流れで解説しています。
- 所得控除と税額控除の違いを簡単解説
- 所得控除より税額控除の方が節税効果が大きい理由
- 所得控除と税額控除にはどんなものがあるの?
似ているようで趣旨の異なる2つの制度を理解し、正しい節税の仕方を一緒に学びましょう。
所得控除と税額控除の違いを簡単解説
≪所得控除とは≫
所得控除とは、一定の要件を満たすことで合計所得金額から差し引ける金額のことです。医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などが所得控除に該当します。この制度は、配偶者や直系尊属を扶養しているなどの納税者の個人的な事情を考慮するために定められた制度です。所得控除は合計14種類存在し、それぞれの控除に応じて差し引ける金額も異なります。
また、所得控除のなかには確定申告しなければ適用にならない控除もあるため、年末調整のみの会社員などの人はとくに所得控除について理解を深めてください。
≪税額控除とは≫
税額控除は、その趣旨によって4つにまとめることができます。
- 二重課税の排除 ⇒ 配当控除など
- 生活負担の軽減 ⇒ 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)など
- 施設や団体への寄付のうながし ⇒ 公益社団法人などへの寄付金
- 災害被害者の減免
冒頭の「個人所得税の計算方法」を見てわかるとおり、課税所得金額に所得税率を掛けた後、いわゆる「所得税」から直接差し引けるため節税効果が最も大きい控除とされています。
所得控除より税額控除の方が節税効果が大きい理由
所得控除より税額控除の方が節税効果が大きい理由は、所得税の計算方法を深く理解するとより分かりやすいです。ここからは所得税の計算方法を具体例ととも段階に分けて解説していきます。
≪個人所得税の計算方法≫
⇩
『合計所得金額-14種類の所得控除=課税所得金額』
⇩
『課税所得金額×所得税率=所得税』
⇩
『所得税-税額控除』
例えば、事業収入500万円と給与収入500万円を得ている個人事業主A(男性)さんがいるとしましょう。
Aさんは奥さん(パートのみ合計所得金額45万円)と息子(16歳の高校生:所得0円)と娘(20歳の大学生:所得0円)と生計を一にしています。3年前に新築住宅を取得し、住宅ローン控除20万円を受けることができます。
事業収入を得るために支出した費用200万円を必要経費とした場合、事業所得が300万円となります。給与は給与所得に該当するため、給与所得控除を給与収入から差し引くことができます。給与収入500万円の場合、給与所得控除144万円(計算式:給与収入×20%+44万円)を差し引いた356万円が給与所得となります。
事業所得と給与所得の合計656万円が合計所得金額となります。
Aさんが受けられる所得控除は、
配偶者控除38万円(妻)+扶養控除38万円(息子)+扶養控除63万円(特定扶養控除に該当する娘)+基礎控除48万円=187万円です。
※2020年10月時点
合計所得金額656万円-所得控除187万円=課税所得金額469万円
469万円の課税所得金額の人が納める所得税は
510,500円(計算式:課税所得金額×所得税率20%-427,500円)です。
ここから住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)20万円が差し引かれます。つまり、Aさんが納める310,500円です。実際は社会保険料控除や源泉徴収税があるのでさらに納める所得税は低くなります。
この例題からわかるように、合計所得金額から差し引く所得控除より、所得税額から直接差し引くことができる税額控除(住宅ローン控除)のほうが節税効果が大きいといえます。
所得控除と税額控除にはどんなものがあるの?
≪14種類の所得控除≫
「物的控除」
- 雑損控除 ⇒ 災害や盗難などにより被害を受けた場合に適用。
- 医療費控除 ⇒ 1年間に支払った医療費等。
- 社会保険料控除 ⇒ 本人または生計を一にする配偶者や親族等が支払った社会保険料。
- 小規模企業共済等掛金控除 ⇒ 小規模企業共済掛金を支払った掛金全額。
- 生命保険料控除 ⇒ 一般・介護医療保険・個人年金保険の支払った保険料。
- 地震保険料控除 ⇒ 本人または生計を一にする配偶者や親族等が所有する
家屋の保険を目的とする地震保険料。 - 寄附金控除 ⇒ 本人が支払った寄付金。
「人的控除」
- 基礎控除 ⇒ 合計所得金額2400万円以下である人全員に適用。
- 配偶者控除 ⇒ 控除対象配偶者に該当する場合に適用。
- 配偶者特別控除 ⇒ 配偶者の合計所得金額1000万円以下であり、かつ、
合計所得金額が48万円超133万円以下である配偶者に該当する場合に適用。 - 扶養控除 ⇒ 16歳以上の控除対象扶養親族に該当する場合に適用。
- 障害者控除 ⇒ 本人または同一生計配偶者等が障害者である場合に適用。
- 寡婦(寡夫)控除・ひとり親控除 ⇒ 本人が寡婦またはひとり親である場合に適用。
- 勤労学生控除 ⇒ 本人が勤労学生である場合に適用。
≪4つに分類される税額控除≫
- 配当控除 ⇒ 株式投資などで配当金を得た場合に適用。
- 外国税額控除 ⇒ 外国で納めた所得税がある場合に適用。
- 寄附金控除 ⇒ 公益社団法人等・認定NPO法人・政党等への寄付金を納めた場合に適用。
- 住宅ローン控除 ⇒ 住宅借入金等を利用して新築または増改築等をした人で
一定の要件を満たした場合に適用。 - 災害減免法 ⇒ 災害により住宅等への損害を受けた場合に適用(雑損控除と選択可)。
まとめ
本記事を読んで所得控除と税額控除の違いについて理解を深められたでしょうか。本記事を簡単におさらいしておきましょう。
- 所得税は『(収入金額-必要経費または各種所得控除-14種類の所得控除)×所得税率-税額控除』
にて算出される。 - 所得控除は合計所得金額から差し引ける金額のこと。
- 税額控除は所得税から直接差し引ける金額のこと。
- 所得控除より税額控除の方が節税効果が大きい。
- 所得控除は全部で14種類あり、税額控除は大きく4種類に分類される。
以上のように所得控除と税額控除を正しく理解し、みなさんに適用できる控除を見つけてみてください。
当社は本記事でご紹介した所得控除と税額控除の違いについてのご相談にも丁寧に対応いたします。所得控除と税額控除の詳細について専門家の意見が聞きたい人はお気軽にご相談ください。
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