事業年度の変更による節税について解説

事業年度の変更による節税について解説

記事作成日 2020/07/14    記事更新日 2023/02/05

事業年度とは

事業年度と決算期

全ての法人は、会社の経営・財務状況を、一定の期間を区切って決算する必要があります。この「一定の期間」を事業年度といい、1年以内であれば何ヶ月で設定しても問題ありません。また一般にこの事業年度の最終日を「決算日」、決算日が含まれる月を「決算期」と呼んでいます。

大きな利益が出たときは事業年度を短縮して節税できる

期中、とくに期の終盤に突発的な利益が出た場合、そのまま決算日を迎えると法人税等の税金が通常よりも多くかかってしまいます。そんなときは事業年度を短縮することにより、利益を翌期に持ち越し節税をすることが可能です。

例えば、事業年度が4月1日~3月31日、税率は30%の法人で以下のような利益がでた場合をモデルケースとして考えてみましょう。

  • 4~2月までの利益は100万円/月(4-2月累計1,100万円)
  • 3月の利益は1,000万円(4-3月累計2,100万円)

この場合、通常通り3月決算だと、4-3月の累計利益2,100万円に対して法人税等がかかるため2,100万円×30%=630万円の法人税等を支払うことになります。

対して、事業年度を4月~2月に短縮した場合は4-2月の累計利益1,100万円に対し法人税等がかかるため、1,100万円×30%=330万円の法人税等となり、約300万円節税できることとなります。

事業年度変更の方法

事業年度の変更は実は簡単です。臨時株主総会によって定款を変更し、税務署に届出をするだけで事業年度が変更できます。

臨時株主総会にて定款を変更する

事業年度は定款に定められているため、まずこちらを変更する必要があります。その後臨時株主総会を開催し、定款の承認が可決されれば第一段階完了です。その際、議事録を忘れずに作成するようにしましょう。

税務署へ決算期変更の届出をする

定款を変更したら、その旨を所轄の税務署、県税事務所あるいは市町村役場のいずれかへ「異動届出書」を届け出ます届出の際には前述の臨時株主総会の議事録を添える必要があります。

変更期限
1.株主総会の決議⇒変更後の決算年度末まで
2.定款変更手続き⇒株主総会決議後、速やかに
3.税務署等に対する「異動届出書」の提出

事業年度変更の注意点

翌期の利益対策が必須

当然ですが、利益を翌期に繰り越しているためそのままにしておくと翌期の決算時に法人税等が多くかかることになってしまいます。そのため繰越先の期では何らかの利益対策をする必要があります

例えば、

  • 翌期で投資を行う
  • 役員報酬を増額する

などを行い、利益を圧縮することが考えられます。

ただ、役員報酬の増額は事業年度変更のタイミングで期初に行いましょう。期中に役員報酬の変更を行うと変更額部分が損益不算入となり、追加で法人税等を支払うことになってしまいます。事業年度を変更し、新しい期が始まるタイミングで役員報酬を増額すれば全額を損金算入でき、追加で課税されずに済むため、事業年度変更の際は役員報酬の増額を検討することを忘れないようにしましょう。

役員報酬について解説した記事はこちら↓

納税が前倒しになる

こちらも当たり前ですが、事業年度を短縮するということは納税のタイミングが早まるということです。通常法人税や消費税、地方税などの納税は決算期の2ヶ月後に行います。それまで3月決算だった法人が、事業年度の短縮により2月決算になる場合、納税のタイミングも5月から4月に早まります。

一時的に資金繰りに影響を及ぼす可能性があるため、キャッシュフローをよく確認することが大切です。

頻繁な事業年度の変更は税務調査が厳しくなる可能性も

事業年度の変更については回数に制限がなく、理論上は毎月事業年度を変更することも可能です。ただ、あまりに頻繁に事業年度を変更していると税務署から「過度の節税を行っている」と判断され、税務調査が厳しくなる可能性があります。

事業年度の変更は必要最小限にとどめ、ここぞという時に行いましょう

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まとめ

事業年度の変更は、比較的手続きが容易でキャッシュも必要ないため、取り組みやすい節税です。翌期の利益対策や、当期納税の資金繰りをよく検討・確認した上で、有効に事業年度を変更して節税に取り組みましょう。

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