家賃の前払いによる節税とは?
記事作成日 2020/07/14 記事更新日 2023/02/05
1.家賃の前払いによる節税とそのスキーム
家賃の前払いをすることで節税することができます。と言っても、そもそも販売費、一般管理費その他の費用が損金として認められる条件があるので、前払いをすれば全て損金として認められる訳ではありません。前払いを損金として認められる条件は、法人税基本通達2−2−14に記載されていますので内容を見ていきましょう。
法人税基本通達2−2−14では前払費用の額は、当該事業年度終了の損金の額に算入されないものであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入している時は認めるとされています。
注意書きで収益の計上と対応させる必要があるものについては認められないとされているので留意が必要です。上記にはポイントが以下の5つがあります。
- 支払った日から1年以内に提供を受ける役務であること
- 提供を受ける役務に対して対価を支払っていること
- 継続的に行われる取引で同様の方法で支払っていること
- 継続して支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していること
- 収益の計上と対応させる必要がないもの
上記のポイントさえクリアができれば、例外的に損金として認められることになります。
例えば、3月決算の会社で上記のポイントを当てはめると、次の事業年度の4月から3月(1年間)の家賃について、3月末時点まで(事業年度の終了の日まで)に支払が完了しており、来期以降も同様の方法で支払う必要があります。そして、来期以降も支払ったものについては事業年度に損金として算入され続けないといけません。これは当期の業績がいいから、今期だけ前倒しする、要は利益操作をされるリスクがあるため、継続して同様の方法で支払わなければなりません。
また、自分あるいは自社で使う家賃であれば問題ないのですが、例えば、転貸をしているケースであればこれは適用できません。転貸をしている場合は来期以降に収益が計上され、その収益に対応する費用であり、(5)のポイントに当てはまらないため、認められないからです。
家賃を前払いしたとき、どのような節税効果があるのでしょうか。例えば、月50万円の事務所を借りる契約について、3月31日に4月から1年間分の家賃を支払うという条件の契約をしましたというケースを考えてみましょう。
月50万円かける12カ月(1年間)の家賃分である600万円の全額を損金計上することができるので、600万円かける税率分(仮に税率30%とします)の180万円の節税効果があります。これは600万円の益金があるとすれば、払う税金(180万円)をなくすことができるということです。つまり、1年間の家賃かける税率分の節税が見込めるわけです。
それまでに払っていた家賃があれば、当然その家賃も損金として認められるため、2年分の家賃が1年の損金とすることができるのです。益金が多く出たケースではそこに損金をぶつけることで支払う税金を減らせるのです。ちなみに、この方法は家賃以外でも保険料、リース料など契約書で継続的に取引があるものに関しても適用ができるので節税に使うことが可能です。
また、契約書の締結は必要ではあるものの、事前準備も少なく、節税ができる点が他の節税方法と比較して優れている点です。
2.家賃の前払いによる節税のデメリット
一方で、家賃の前払いすることでデメリットもあります。デメリットとしては以下の3点があげられます。
- 節税メリットを受けられるのは年払いを始めた最初の期だけ
- 1年分の支払いをする資金が必要
- 1年間は移転ができない
前払費用を損金とするためには継続的に同様の方法で支払を行った上で、毎期損金として計上する必要があるため、年払いを始めた最初の期しか節税ができません。
(翌期以降は1年間の損金しか計上できないため)
また、事業年度の終了の日までに支払を行うことが要件となるため、1年間の家賃分の資金を用意する必要があります。継続的に同様の方法で支払う必要があるため、毎期1年間の家賃分の資金を用意する必要があります。さらには、1年分の家賃を前払いするため、1年間は移転ができません。移転することは可能ですが、家賃が無駄となるため、通常では移転しないという判断になるかと思います。
以上のデメリットはあるものの、事前準備が少ない方法ではあるので利益が出たときは検討するに値する節税方法だと思います。
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