事業承継がスムーズにホールディングス化のメリット・注意点について解説

事業承継がスムーズにホールディングス化のメリット・注意点について解説

記事作成日 2022/02/14    記事更新日 2022/06/23

高齢の経営者にとって、いかに事業承継をスムーズに行うかということは大きな課題となっています。今まで順調に経営していた会社でも、事業承継がうまくいかなかったことで急激に経営状況が悪化するという可能性もあります。

また、事業の承継と個人資産の配分を巡って相続人間で争いになることもあるでしょう。今回は事業対策に有効なホールディングス化スキームについて解説します。

事業承継の課題

事業承継には様々な課題が複雑に絡み合っています。事業承継には具体的にどのような課題があるのか確認しておきましょう。

後継者へのスムーズな株式移転

経営者にとって後継者にスムーズに自社株の株式移転をすることは最大の課題といってよいでしょう。相続人が複数いる場合、一人の後継者に株式移転をすることは簡単ではありません。

後継者が株式を相続や贈与などで取得することは納得しても、他の財産についても配分を検討する必要があります。特に株式が財産の大部分を占めるようなケースでは後継者一人に株式を移転することでバランスが崩れやすくなりますので、注意が必要です。

株式の移転では、財産全体の配分の問題がありますが、複数の相続人に株式を配分すると経営権が分散してしまうため、バランスをとることが非常に難しいのです。

相続税・贈与税

株式を後継者に移転することで相続税や贈与税の負担があります。事業が成功、株価も上昇している場合は納税の負担も大きくなってしまいます。

自ら経営している会社の株式は資産運用の一環として保有している株式とは異なり、売却して納税するということもできないため、あらかじめ納税資金を確保しておく必要があります。

事業承継に有効なホールディングス化

経営者にとって悩ましい事業承継ですが、有効な対策としてホールディングス化を検討してみてもよいでしょう。ホールディングス化について解説します。

ホールディングス化とは

ホールディングス化とは後継者が持ち株会社を設立することで、事業承継を実現する仕組みです。具体的には、後継者が持ち株会社を設立し、持ち株会社が自社株を買取します。自社株を買い取る際の資金は銀行の融資を受けるなどして調達します。

持ち株会社が自社株の株式を買い取ることで、経営権は持ち株会社に移りますので、結果的に後継者に経営権が移ったことになります。法人の設立は資本金1円でも設立することが可能です。

ホールディングス化のメリット

ホールディングス化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

①円滑に事業を承継できる

ホールディングス化を行うことで、自社株を確実に後継者に移転することが可能です。自社株について何も決めずに経営者が亡くなった場合、相続人で協議して財産を配分する必要があります。

遺産分割協議が整わなければ後継者が自社株を相続することができませんので、生前に確実に後継者に自社株を移転できるということは大きなメリットになります。

②税金対策になる

ホールディングス化を行うことによって自社株の株価の上昇を抑制することが可能です。株式の評価は利益が出ればでるほど上がっていきます。そのため、利益が出ている会社の場合、今後利益をあげていけば株価がどんどん上昇し、結果として相続税の負担が大きくなってしまいます。

一方で、ホールディングス化した場合は含み益の37%分(法人税相当額分)を利益から控除することが可能です。

また、現社長は後継者の設立した持ち株会社に売却した時点で現社長の資産は現金化されますので、その時点で売却した分の株価は固定されることになります。

今後株価上昇が予想される場合には株価の上昇を抑えることで、相続税対策として有効な手段となります。

ホールディングス化の注意点

ホールディングス化には注意点もあります。注意点についてもしっかりと確認しておきましょう。

①税金が高くなる可能性がある

ホールディングス化した際に現社長から自社株を買い取ることになりますので、現社長には現金が残る形となります。現社長に売却した際の現金が残ったまま相続が発生した場合、その現金に対して相続税がかかります。

また、自社株を売却する際の譲渡益に対して20%の譲渡所得税がかかりますので、譲渡所得税と相続税をあわせると、かえって税金が高くなってしまう可能性があります。

②税務署に否認される可能性がある

本来ホールディングス化は経営を円滑に行うために利用するものです。節税だけを目的として設立された会社は税務署に否認されてしまう可能性もあります。会社経営との整合性を保つ必要がありますので、税理士などの専門家に確認しながら進めるようにしましょう。

③借入が必要となる場合がある

ホールディングス化する場合に株式を購入するために資金を用意する必要があります。一度に多額の資金を用意することができない場合は、銀行融資を受けることになるでしょう。

現在は低金利となっていますので、金利負担は大きくありませんが、今後金利が上昇した際には金利負担も大きくなってしまいます。

ホールディングス化とあわせて行いたい相続対策

ホールディングス化はメリットもあるものの注意点もあります。他の対策をあわせて行うことで、ホールディングス化の弱点も補うことが可能です。ホールディングス化とあわせて行いたい対策について解説します。

遺言作成

ホールディングス化によって自社株を後継者に移転することは明確にすることができますが、他の財産については、配分を明確にすることができません。相続発生によって財産が分散すれば、後継者が円滑に事業運営を継続できないこともあります。

現社長名義の財産の中でも不動産や現金など会社経営に必要なものがあれば、遺言を作成し、後継者に引き継ぐことができるようにしておきましょう。

生前贈与

ホールディングス化した場合、現社長から自社株を買い取ることになるため、多額の現金が現社長に残ることになります。

多額の現金が現社長に残った場合、相続税の課税対象となり、多額の相続税が課されますので、生前贈与を行うなど、財産を次の世代に移転する対策が有効です。

生前贈与をする場合は年間110万円までは非課税で贈与することが可能です。後継者以外にも贈与をすることができますので、継続的に多くの相続人に贈与を続けることで、相続が発生する前に多くの財産を多く移転することができます。

不動産を活用した相続税対策

不動産を活用した相続対策は会社経営をしている人でなくても、多くの資産家が行っている対策です。

不動産は土地を路線価、建物を固定資産税で評価しますが、いずれも時価よりは低くなるため、不動産を購入することで相続税の課税対象となる財産を圧縮することができます。

現社長が自社株を持ち株会社に売却した際に得た現金で不動産を購入することで相続税対策をすることが可能です。

まとめ

経営者にとって事業承継は難しい問題です。後継者にしっかり引き継ぎ、円滑に事業運営をすることは簡単なことではありません。

ホールディングス化は確実に後継者に引き継ぐことになり、株価の上昇を抑制することにもつながりますので、有効な手段の一つといえるでしょう。

ただし、注意点もあります。他の対策も有効に活用しなければ、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。ホールディングス化を行う場合は税理士などの専門家に相談しながら進めるなど、慎重に行う必要があるでしょう。

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