【相続】税制改正にともなう暦年贈与の変更点
記事作成日 2022/01/31 記事更新日 2022/06/24
年間110万円まで贈与税がかからない暦年贈与。変更されるかもしれないと、毎年のように話題になっていますが2022年4月から、暦年贈与は変更されるのでしょうか?2021年12月10月に発表された、令和4年度の税制改正大綱で大まかに2022年4月からの税制改正も見えてきました。
そこで今回の記事では、税制改正にともない今後予想される暦年贈与の変更点などについて解説します。
Contents
暦年贈与とは?相続税対策としての暦年贈与
暦年贈与とは?
年間110万円(贈与税の基礎控除額)までの生前贈与は、贈与税が非課税になり申告手続きも不要です。この贈与税の非課税制度のことを暦年贈与といい、非常に有効な相続税対策として活用されています。
相続税対策としての贈与制度
相続税が課税されそうな場合、相続税対策のひとつとして生前贈与を検討することがあります。所有財産を生きている間に贈与することで、相続予定財産を減らして相続税を減らすという手法です。
相続税対策として贈与を活用する場合、次のような制度があります。
・暦年贈与(年間110万円まで非課税)
・住宅取得等資金の贈与税の特例(18才以上、省エネ等住宅は1,000万円まで非課税)
・教育資金の一括贈与(子供・孫が30才未満、1,500万円まで非課税)
・結婚・子育て資金の一括贈与(子供・孫が20~49才。1,000万円まで非課税)
・贈与税の配偶者控除(夫婦間の不動産・不動産購入資金の贈与2,000万円+基礎控除110万円まで非課税)
令和4年度税制改正大綱と暦年贈与
税制改正の流れは次のようになります。
・翌2月ごろに税制改正法案を国会に提出
・3月ごろに税制改正法案が可決
・4月から改正税法が施行
この流れのとおり2021年12月10月に、令和4年度の税制改正大綱が発表されました。この大綱によって、2022年4月からの税制改正の大まかな内容が見えてきました。
暦年贈与は令和3年度の税制改正大綱で、廃止を含む大きな変更が盛り込まれるのではないかと言われていました。しかし前回大きな変更は見送られたため、令和4年度の税制改正大綱での変更が有力視されていたということになります。
税制改正にともなう暦年贈与の予想変更点
暦年贈与の変更点とし話題にあがっていたのは、110万円まで非課税となる暦年贈与の廃止などでした。しかし令和4年度の税制改正大綱でも、特に具体的な発表はありませんでした。
暦年贈与の廃止や、相続税と贈与税の一体化などは、大きな税制改正となるので、国民への周知にも時間をかけていると思われます。それでは令和4年度の税制改正大綱から予想される、暦年贈与の今後の変更点を説明します。
①持ち戻し期間が現在の3年から延長?
②孫やひ孫への贈与も持ち戻し対象化?
③暦年贈与の廃止?
④実質的な贈与税の非課税化?(相続税と贈与税の一体化)
①持ち戻し期間の延長や②孫やひ孫の持ち出し対象化などは、可能性としては高いと思われます。③暦年贈与の廃止は、2024年あたりから実施される可能性が高いと考えています。④相続税と贈与税の一体化をにらんだ、実質的な贈与税の非課税化は、相続税改正の最終段階になるのではないでしょうか。
それでは次項から具体的に説明していきます。
暦年贈与の予想変更点①:持ち戻し期間が現在の3年から延長?
現行ルールでは、生前贈与の3年内加算ルールがあります。(2022年1月現在)
相続税の計算:相続財産+3年以内の生前贈与財産(暦年贈与含む)
・日本:3年
・アメリカ:生涯
・イギリス:7年
・ドイツ:10年
・フランス:15年
上記のように、現在日本は生前贈与(暦年贈与含む)3年以内加算ルールとなっており、主要国内では短くなっています。アメリカは一生涯加算となっており、アメリカルールが導入される可能性もあります。
日本はすでに、相続時精算課税制度で一生涯加算ルールを導入しており、贈与一生涯加算の準備を進めている可能性もあります。令和4年度の税制改正大綱の内容から、この生前贈与3年以内加算ルールは、今後見直される可能性が高いと思われます。
暦年贈与の予想変更点②:孫やひ孫への贈与も持ち戻し対象化?
前述のように、現行のルールでは生前贈与の3年内加算ルールがありますが、孫やひ孫への贈与は対象外になっています。
相続人(相続または遺贈により財産を取得した人)
※相続人に該当しない孫・ひ孫は対象外
孫・ひ孫を贈与の3年内加算ルールの対象外にしたままでは、暦年贈与の予想変更点①持ち出し期間の延長をする趣旨に反してしまいます。孫・ひ孫への贈与で相続税対策が続けられるからです。
令和4年度の税制改正大綱の趣旨を読み解くかぎり今後、孫・ひ孫への贈与も、3年内加算ルール(相続税の持ち出し)の対象にされる可能性が高いと予想されます。
暦年贈与の予想変更点③:暦年贈与の廃止?
前述のとおり、この暦年贈与の廃止は数年前から話題にあがっており、前年2021年4月から実施されるのではないかと言われていました。しかし新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの影響もあり見送られました。
2022年4月からは実施されるだろうと言われていましたが、2022年4月からの実施も見送られました。
暦年贈与の予想変更点④:実質的な贈与税の非課税化?
相続税増税に関して、国が目指すところは、相続税と贈与税の一体化と言われています。
相続と贈与の税負担を同じにし、親世帯から子世帯への財産移動を早期化することによって、景気を活性化させる(相続発生まで待たず、早めに贈与しても税負担で損しない)
このように相続税と贈与税の一体化を進め、景気の活性化を行うという趣旨から、今後贈与税非課税に移行させていく可能性は高いと言えます。
ただし、国が国民の財産保有状態を把握するためにも、贈与税などの申告義務は維持し、申告しなければ罰則や罰金というルールに変更させていくのではないでしょうか。
・相続税と贈与税の一体化
・贈与税は課税しないが申告は必要(未申告の罰則・罰金あり)
・相続発生時に相続税・贈与税を清算して課税(相続時精算課税制度!?)
相続税増税の流れとして、今後このようなルートも予想されます。
相続税と贈与税の一体化の布石として、すでに相続時清算課税制度が導入されています。相続時清算課税制度は2,500万円までの贈与を非課税にしますが、相続発生時に清算して課税されます。
加算期間は一生涯となり、すでに一部で相続税と贈与税の一体化が行われていると言えます。
税制改正にともなう暦年贈与の変更点:まとめ
税制改正にともない今後暦年贈与の変更点として予測されるのは
・孫とひ孫を加算ルールの対象化
・暦年贈与の廃止
・相続税と贈与税の一体化(実質的な贈与税の非課税化)
などになります。一斉に行われるのではなく、順次行っていくと予想されます。令和4年度の税制改正大綱で『不断の見直しを行っていく必要がある』と強く主張しており、遠からず大きな税制改正が行われる可能性が高いでしょう。
2022年は、暦年贈与などの贈与も相続税対策として活用できます。また、相続税と贈与税の一体化が行われても、相続税の節税対策はいろいろとあります。
ただし、いろいろな要件などがあり、難しい点も多々ありますので、不明なことなどございましたら、ぜひお気軽に「税理士法人 小山・ミカタパートナーズ」にご相談ください。
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