税込処理と税抜処理はどちらが節税になる?その理由とは
記事作成日 2020/08/30 記事更新日 2023/02/05
1.税込処理と税抜処理とは
税込処理と税抜処理なら税抜処理のほうが節税になる理由と言われても、そもそも税込処理と税抜処理というのはどのような処理方法なのでしょう。消費税法上では、それぞれ税込処理は税込経理方式、税抜処理は税抜経理方式となっています。国税庁のホームページの中にあるタックスアンサー(よくある税の質問)No.6375に税抜経理方式又は税込経理方式による経理処理について書かれています。
消費税の納税義務者である事業者は、所得税又は法人税の所得計算に当たり、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」といいます。)について税抜経理方式又は税込経理方式のどちらを選択してもよいとされています。
よって、税抜方式でも税込方式でもどちらでも採用できます。では、それぞれの方法はどのような方式なのでしょうか。
税抜経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は仮受消費税等の額は仮受消費税等とし、課税仕入れに係る消費税等の額については仮払消費税等とします。これはどのような処理なのでしょうか。
例えば、7,000円で商品を掛仕入し、10,000円で現金売上したとしたら、以下の仕訳となります。
(仕入時)
仕入 7,000円、買掛金 7,700円
仮払消費税等 700円
(売上時)
現金 11,000円、売上 10,000円
仮受消費税等 1,000円
一方、税込経理方式による場合は、課税売上げに係る消費税等の額は売上金額、仕入れに係る消費税等の額は仕入金額などに含めて計上し、消費税等の納付税額は租税公課として必要経費又は損金の額に算入します。
これはどのような処理なのか上記の例を使って考えてみましょう。
(仕入時)
仕入 7,700円、買掛金 7,700円
(売上時)
現金 11,000円、売上 11,000円
税抜処理と税込処理では、上記のような違いが出ます。
では、どちらの処理が一般的な方法と言えるのでしょうか。大企業では税抜処理、中小・零細企業では税込処理を採用しているケースが多いです。これは、消費税の納税義務が免除されている免税事業者が、税込処理しか認められていないため、中小・零細企業は税込み処理を採用するケースが多いのです。一方で、大企業では税込処理をした場合、決算の数字に与える影響が大きく、免税事業者に該当しないことから、税抜処理を採用しているケースが多いです。
2.税抜処理の方が節税効果がある?
では税抜処理と税込処理ではどちらが節税効果があるのでしょうか。結論から言うと税抜処理を採用した場合の方が節税効果があります。ということで税抜処理をするとなぜ節税効果があるのかみていきましょう。
税抜処理において節税効果に差が出るのは以下の2つの場面です。
- 減価償却費の判定
- 交際費の損金算入限度額の判定
まずは減価償却費の判定についてですが、取得価額の違いにより減価償却費について以下の処理の違いがあります。
- 取得価額が10万円未満:少額減価償却資産
- 取得価額が20万円未満:一括償却資産
- 取得価額が30万円未満:中小企業等の少額減価償却資産
(資本金1億円以下の中小法人及び個人事業主に限る)
これらの要件を判定する際に、税抜処理であれば税抜価格で、税込処理であれば税込価格で判定することとなります。
例えば、税抜価格が98,000円の固定資産を購入した場合を考えていきましょう。税抜処理を採用していれば、取得価額は98,000円であるため、少額減価償却資産として償却されます。
一方で、税込処理を採用していれば、取得価額は107,800円となるため、少額減価償却資産ではなく、一括償却資産として償却されます。もちろん前者の方が償却額が大きくなり、税額を抑えることができます。
次に交際費の損金算入限度額の判定ですが、こちらは中小事業者のみが認められるものとなります。中小事業者については、法人税法上、交際費の損金算入限度額として800万円が認められています。この800万円の判定は、税抜処理であれば税抜金額で、税込処理であれば税込金額で判定されることになるので、当然税抜処理の方が有利に働くことになります。
消費税率が10%である現在であれば、逆算すると大体70万円程度の違いが出るため、影響額は大きくなります。
また、交際費の論点で1人あたり5,000円以下の飲食等は交際費ではなく、会議費などで処理できますが、ここでも税抜処理の方が金額が小さくなり、会議費などに区分できるものが増えるため、有利な結果となります。
以上のように、減価償却費の判定や交際費の判定の際に税抜処理を採用していれば、取得価額や交際費を小さくすることができ、判定が有利になり、節税ができるということになります。2つの論点と言ってもそれなりの影響額が出てくるので覚えておいた方がいいものになります。
3.税抜処理をすることで節税に
以上、消費税における税込処理と税抜処理についてみてきました。
税抜処理をすることで取得価額や判定に使い費用金額が小さくなり、判定上有利となります。よって、税抜処理をする方が節税となり、税務上は有利になるのです。処理は面倒くさいかもしれませんが、税抜処理をしましょう。
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