外注と給与の区分には要注意!節税どころかトリプルパンチの可能性

外注と給与の区分には要注意!節税どころかトリプルパンチの可能性

記事作成日 2020/10/06    記事更新日 2023/02/05

本来、労働力などの対価として支払われる給与や外注先への費用は経費として認められます。一見、どちらも経費として認められるのであれば大差ないと考える人も多いのではないでしょうか。結論から申し上げると「外注費」と「給与」は全く異なる経費です。

  • 外注費:業務委託契約等を交わした者に対する経費
  • 給与:正社員やアルバイトなどの雇用契約を交わした者に対する経費

誤った情報のまま申告し続けると税務調査が行われた際に、延滞税や加算税が発生してしまった・・・なんてケースも少なくありません。そのような失敗を未然に防ぐためにも本記事では「外注」と「給与」について徹底解説しています。事業の拡大に伴い、人を雇うか外注するかを迷っている人はぜひ参考にしてみてください。

外注と会社員の区分

まずは「外注費」と「給料」の違いについて確認しましょう。

給与

社員やアルバイト、パートなどの雇用形態が生じる者に支払う費用は「給料」や「雑給」、「賞与」として計上します。給料の特徴は手取り金額が少なくなることです。

原則、会社は源泉徴収義務者に該当し、給与支給時に所得税を天引きしなければなりません。そのほかにも住民税や社会保険が天引きされるため、手取り金額は外注費と比べて少なくなります。
※源泉徴収義務者・・・会社や個人が、人を雇って給与を支払ったり、税理士等に報酬を支払う場合に、支払金額に応じた所得税及び復興特別所得税を差し引くことをいう。

また、給与は不課税取引(消費税の課税要件に該当しない取引)に該当するため消費税は発生しません

外注費

外注費は請負契約またはそれに準ずる契約を交わした者に支払う費用をいいます。外注費は源泉徴収の義務がないため支給額がそのまま経費として計上できます。経理処理が楽でありながら外注先の手取りが増えるのも外注費の特徴です。

また、外注費は消費税の課税要件に該当し、課税仕入取引として支払額に対して10%の消費税が加算されます。

社長は外注にしがちな理由

社長が給与より外注費として計上したくなる一番の理由は「消費税納税額の減少」です。原則、消費税は「受け取った消費税-支払った消費税=納める消費税」という計算方法で求めます。つまり、支払った消費税が増加すればするほど「納める消費税」が減るということです。

例えば、アプリの開発事業を営んでいる会社が110万円(消費税10万円含む)の売上をあげるために、アプリ開発費用として55万円(消費税5万円含む)使用できるとしましょう。アプリ開発のためにエンジニアを雇った場合は、給与として55万円の経費を計上します。

この時納める消費税は「売上の消費税10万円-給与の消費税0円=納める消費税10万円」となります。

法人税を約20%と仮定すると、エンジニアを雇った場合「売上100万円-給与55万円=利益45万円×法人税20%」

よって納める税額
法人税9万円+消費税10万円=合計19万円

一方、外部のエンジニアに55万円で外注した場合は、外注費として50万円を経費計上します。この時納める消費税は「売上の消費税10万円-外注費の消費税5万円=納める消費税5万円」となります。

法人税を約20%と仮定すると、外部のエンジニアに依頼した場合
「売上100万円-外注費50万円=利益50万円×法人税20%」

よって納める税額
法人税10万円+消費税5万円=合計15万円

このように同額の経費を計上した場合でも「給与」と「外注費」では納税額が大きく変わります

外注を社員に見なされる場合

ここまで「外注費」と「給与」の違いをご紹介してきましたが、「外注費」の方が税金面で有利になることがお分かりいただけたと思います。「外注費」の方が有利である!という情報をもとに経営者のなかには、給与に該当する費用を外注費として計上するケースもでてきます。そのため、税務調査ではその支払った費用が外注費に該当するか否かが争点となります。

≪外注費の条件≫
国税庁HP参照 消費税法基本通達

  1. その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
  2. 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
  3. まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
  4. 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。 

これらを総合的に判断して外注費に該当するか否かを判断します。

社員認定のリスク(源泉税、不納付加算税+延滞、消費税)

外注費が否認され、給与に修正する場合は最高7年間遡及されます。

例えば、外注費55万円を給与に修正した場合

消費税:5万円×12か月=60万円×7年=420万円
源泉所得税:5万円×12か月=60万円×7年=420万円
※簡略化のため所得税率10%に設定
合計:消費税420万円+源泉所得税420万円=840万円

本税840万円とは別に「延滞税」「不納付加算税」がペナルティとして加算されます。

≪延滞税の計算方法≫
延滞税の額は、法定納期限の翌日から完納する日までの日数に応じ、次により計算した金額の合計額(1+2)となります。

国税庁HP参照 延滞税の計算方法

上記のURLから延滞税の計算が可能です。より詳しく計算される方はご確認ください。

≪不納付加算税≫
不納付加算税は、納付すべき税額に対し10%の割合で課税されます。ただし、自主申告で納付した場合は、納付すべき税額に対し5%の割合で課税されます。

また、1ヵ月以内の納付遅延については不納付加算税の課税がされません。源泉所得税の不納付加算税取り扱いについてより詳しく知りたい人は下記のURLからご確認ください。

国税庁HP参照 源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて

まとめ

給与と外注費の線引きは明確な基準がないため判断が難しいです。間違った情報のまま、外注費で経費計上しつづけると後で取り返しのつかない事態になりかねません。当社は税理士法人グループを運営しており、本記事のような税金面でのお悩みや不安を抱えている方は、是非お気軽にご相談ください。

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