役員退職金は節税の出口戦略で非常に重要である

役員退職金は節税の出口戦略で非常に重要である

記事作成日 2021/02/16    記事更新日 2023/02/05

各種節税によって利益を繰り延べていった際、最終的には個人に向けてお金を出していく必要が生じてきます。これを節税の「出口戦略」と呼びます。出口戦略をしっかり考えておかないと、せっかく節税してきたとしても、最終的に多額の税金が課せられてしまいます。本記事は、節税の出口戦略について、詳細を解説していきます

節税の出口戦略でおすすめの方法

繰り延べてきた利益の出口戦略として、下記の方法が挙げられます。

  • 役員退職金の支払い
  • 設備投資を行う
  • 広告宣伝費として利用する
  • 人件費として利用する

役員退職金の支払い

出口戦略としてポピュラーな方法が、役員退職金の支払いです。役員への退職金は、通常の役員報酬、役員賞与よりも課される税額が低くなります。支払う金額にもよりますが、役員退職金に充てることで、役員報酬・役員賞与に充てるよりも、税額が数千万円単位で変わってくることもあります。

設備投資を行う

解約返戻金を設備投資に充てることで、損金を計上することができます。即効性はありませんが、減価償却を利用することで、毎年一定額の損金を計上することが可能です。ただ、役員退職金を利用する場合と比べると、損金にできる金額は少ないです。

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広告宣伝費として利用する

広告宣伝費に解約金・返戻金をあてれば、自社商品やサービスの紹介につながり、中・長期的な利益アップを狙うことができます。広告宣伝費として計上するためには、「不特定多数」の人たちに対して、宣伝を行うことが必要です。特定の人に対する宣伝の場合は「交際費」という扱いになります。交際費になると、使用した金額の50%までしか損金に入れられないので、注意してください。

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人件費として利用する

繰り延べてきた利益分を人件費として利用するのも、おすすめの節税方法です。ボーナスなどにお金をあてれば、社員の士気を高めることにもつながります。また、社員旅行などの福利厚生に使用しても良いですね。

ただし、福利厚生としての社員旅行は「従業員の過半数が参加している」「4泊5日以内の旅行である」ことが条件です。これらの条件を満たした上で、社員旅行の費用に充てるようにしましょう。

社員旅行は法人税法上、経費計上できる!解説記事はこちら

最もおすすめのは「役員退職金」に充てること

出口戦略として、いくつか方法を紹介しましたが、最もおすすめなのは「役員退職金」の利用です。おすすめな理由として「節税効果が他の出口戦略よりも高い」点が挙げられます。

まず、役員退職金にどれほどの税金がかかるのか確認していきましょう。役員退職金には、所得税住民税がかかります。役員退職金の課税対象になる金額は、下記の計算式にて計算します。

(退職する際に受け取る収入総額-退職所得控除額)×1/2

上記の式で登場する「退職所得控除額」について、こちらは退職者の勤続年数をもとに計算されます。退職者の勤続年数が20年以下の場合と20年を超える場合で、控除額の計算が変わってきます。

<勤続年数が20年以下の場合>
40万円×退職者の勤続年数
*計算の結果、80万円に満たない場合は、所得控除は80万円となります。

<勤続年数が20年以上の場合>
800万円+70万円×(退職者の勤続年数-20年)

退職する際の金額から、かなりの金額が退職所得控除が引かれて、かつその金額の半分が課税対象になるため、通常の役員報酬や役員賞与に課される税金よりも圧倒的に税金が少なくなります。他の出口戦略でかかる税金と比べて、多額の税金を節約することが可能です。

役員賞与を出して節税!社会保険も低くする裏技についての解説記事はこちら

役員退職金には分離課税が適用される

通常の所得の場合は、帆の所得と合算して税率を計算します。この方式を「総合課税」と呼びます。これに対して、役員退職金の税金に関しては合算を行わずに、独立して税率を計算します。この方式を「分離課税」と呼びます。

分離課税が適用されることで、合算した金額では扱われず、税率が通常の所得よりも低くなる傾向にあります。下記、課税退職所得金額にかけられる税率と控除額の一覧になります。

課税退職所得金額 税率 控除額
1,000円~194万9,000円まで 5% 0円
195万円~329万9,000円まで 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円まで 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円まで 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円まで 33% 153万6,000円
1,800万~3,999万9,000円まで 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円


役員退職金を利用する際の注意点

役員退職金は節税効果の高いもので、活用していくべきものですが、利用の際には注意点もあります。まず、役員退職金を損金計上すると、高確率で「税務調査」が行われます。税務調査の際は、役員退職金が不当に高い金額でないかチェックが行われます。役員退職金の適正金額は、下記の計算式をもとに算出されます。

役員退職金の適正金額=最終報酬月額×在任年数×功績倍率

*功績倍率とは、所属する会社への貢献度を数値化したものです。
 功績倍率の設定に関しては、明確なルールが設けられていません。これまで会社で設定してきた功績倍率と比較して、数値が乖離しすぎないよう設定しておくと、税務署からの指摘が少なくなります。

上記の適正金額を超えた金額を役員退職金として設定してしまうと、適正額を超えた分に関しては損金不算入となってしまいます。また、役員退職金の適正金額に関して、下記の点にも注意しておく必要があります。

  • 同業他社の役員退職金と比較して、平均値と乖離しないようにする
  • 最終報酬月額だけを高くするのはNG

同業他社の役員報酬の平均値と比べて、金額が高すぎると損金不算入の対象となります。規模が同程度の企業と比べて、役員退職金が高くなりすぎないよう調整しましょう。また、最終報酬月額を高くして、役員退職金の金額を吊り上げるのもNGです。第三者から見て、役員退職金が不当に高く調整されていると見られるので、税務署より指摘が入ります。

役員退職金で損金不算入となった金額分に関しては、法人税・所得税が二重に課せられるペナルティが発生します。役員退職金を高く設定しすぎても得をすることはありませんので、適正な金額を設定するよう細心の注意を払うようにしましょう。

まとめ

役員退職金を利用することで、これまで繰り延べてきた利益分を無駄なく節税に充てることが可能です。分離課税の適用や控除額が大きい点など、他の出口戦略よりも節税効果が高い点、メリットが大きいです。

役員退職金の金額を不当に高くし過ぎると、ほぼ必ずと言ってよいほど、税務署から調査が入ります。同業他社の役員退職金額と比較して、金額が乖離し過ぎないよう注意するようにしてください。

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