エンジェル投資税制について解説します
記事作成日 2021/02/05 記事更新日 2023/02/05
本記事では、エンジェル税制によりどの程度節税できるのか、また優遇措置を受けるための手続きについて解説します。詳細な要件は、ページ下部にフローチャートを付けていますので、そちらをご確認下さい。
Contents
エンジェル税制とは
エンジェル税制は、新しい事業に取り組む創業間もないベンチャー企業に投資をする個人投資家が受けられる税制優遇制度です。
株式投資・・個人投資家・・・と聞くと敷居が高く感じますが、昨今の「クラウドファンディング」の台頭により、個人の方が未上場ベンチャー企業への投資を行いやすくなっています。
優遇措置の内容
エンジェル税制とは、「投資時点」と「売却時点」の2つのタイミングで税制上の優遇措置を受けることができる制度です。では、それぞれの時点での要件を見ていきます。
投資時点で受けられる優遇措置
優遇措置には「A」と「B」があり、節税額が大きい方を選択できます。ただし、投資した年の12月31日時点で株式を保有していることが条件です。
優遇措置A
設立5年未満(注1)その他一定の要件を満たす中小企業者
・控除の対象となる金額
「対象企業への投資額-2,000円」をその年の総所得額から控除することが出来ます。ただし、総所得金額×40%と1000万円(注2)のいずれか低い金額が限度になります。
(注1)基準日(払込期日又は払込日(事前確認の場合は確認申請日))が令和2年3月31日以前については設立3年未満
(注2)令和3年1月1日より、投資額の上限は800万円
優遇措置B
設立10年未満その他一定の要件を満たす中小企業者
・控除の対象となる金額
「対象企業への投資額全額」をその年の他の株式譲渡益から控除することができます。(上限なし)
株式売却時点で受けられる優遇措置
株式を売却する際に損失が生じた場合、その損失をその年の他の株式譲渡益と相殺することができます。もし、損失をその年だけで相殺しきれなかった場合は、翌年以降3年にわたって株式譲渡益と相殺ができます。また、ベンチャー企業が上場できずに破産または解散し、株式が無価値になった場合にも、同様に3年間は繰越・相殺ができます。
ただし、注意点として、「投資時点での優遇措置」を受けていた場合は、その控除対象金額を取得価額から差し引いて売却損失額を計算する必要があります。
優遇措置AとBどちらがお得か
- 優遇措置A:投資額を総所得金額から控除
- 優遇措置B:投資額を株式譲渡益から控除
ケース1
総所得金額:1,500万円
エンジェル投資額:500万円
他の株式売却益:100万円
Aの場合:500万円を総所得金額等から控除(投資額500万円<総所得1,500万円×40%-2千円)
Bの場合:100万円を株式譲渡益から控除
⇒Aの方がお得に!
ケース2
総所得金額:1,000万円
エンジェル投資額:450万円
他の株式売却益:500万円
Aの場合:399.8万円を総所得金額等から控除(投資額450万円>総所得1,000万円×40%-2千円)
Bの場合:450万円を株式譲渡益から控除
⇒Bの方がお得に!
優遇措置を受けるには?
投資方法
投資方法には、「直接投資」と「認定投資事業有限責任組合経由」、「認定少額電子募集取扱業者経由」の3つがあります。
①直接投資
自分でエンジェル税制に該当するベンチャー企業を探す方法です。
中小企業庁のホームページに掲載されている対象企業要件を満たす一覧から探すことができます。
ただ、この一覧表では企業名や代表者名、所在地程度の情報しか記載されていないため、ベンチャー企業とつながりのある税理士法人などから紹介を受けることをお勧めします。
②認定投資事業有限責任組合経由
ベンチャーキャピタルなどが出資する際に組成するファンド経由での投資です。
③認定少額電子募集取扱業者経由
株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームを運営している事業者経由での投資です。株式投資型クラウドファンディングサービスには、投資を募集しているベンチャー企業が取り組んでいるプロジェクトの内容なども記載がありますので、投資判断の材料となるでしょう。ただし、投資先企業がエンジェル税制の適用を受けている、もしくはその予定であるかは、よく確認する必要があります。
※いずれの取得方法にも共通する要件として、すでに発行済の株式を他の株主から買ったり、譲り受けたりした場合は対象となりません。また新規発行株式であっても、金銭の払込によらない取得の場合は対象外です。
確定申告
エンジェル税制は確定申告により減税のメリットを受けることができる制度です。次に、確定申告の際に必要な手続きを紹介します。
投資先企業から必要書類を受け取る
- 経済産業大臣からの確認書
- 投資をした個人が減税対象要件を満たしていることの確認書
- 株式異動状況明細書
申告書を作成・提出する
上記の3つの書類および投資契約書の写しを確定申告書に添付して、税務署に提出すれば手続きは完了となります。
ベンチャー企業側のメリット
エンジェル税制により、資金調達の可能性が高まる、投資してくれている株主に優遇措置となるなど、ベンチャー企業の経営者側にもメリットがあります。ベンチャー企業が対象となるためには、設立からの経過年数や研究開発に従事する社員の人数など、いくつかの要件があります。事前確認制度を利用して、自社が対象となるかを確認できます。
なお、事前確認制度を利用した企業は、その後投資が行われた際には改めて確認申請を行う必要がありますが、ほとんどの重複書類は提出しなくてよいため、負担はそれほどありません。事前確認制度を利用すると、経済産業省のHPにて会社名等を公表してもらえるので、個人投資家によりアピールすることができます。
適用可否判定フローチャート
本記事では、エンジェル投資税制についてご紹介してきました。理解は深まりましたでしょうか。ベンチャー企業と投資家双方にメリットがありますので、この機会にぜひ活用してください。
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