簡易課税制度とは|お得なケースやデメリットなどわかりやすく解説

簡易課税制度とは|お得なケースやデメリットなどわかりやすく解説

記事作成日 2020/08/23    記事更新日 2023/02/05

基準期間(個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度) の課税売上高が1000万円を超える事業者は、消費税の申告が必要です。

今回は、消費税の申告制度である「簡易課税制度」について解説します。簡易課税制度は、中小企業や小規模事業者を対象とした、簡易な方法で消費税額を算出する制度です。

本記事のポイント

  • 課税売上に占める課税仕入の割合がみなし税率よりも低い場合、
    簡易課税を選択した方が節税になる
  • 不利になるケースやデメリットも加味して選択する必要がある

業種等によっては簡易課税制度を選択した方がお得になる場合があります。税負担だけでなく事務負担も軽減されますので、ぜひ参考にしてみてください。

簡易課税制度とは

簡易課税は、中小企業の事務負担軽減のため、実際の仕入れに含まれる税額を計算することなく、売上げに対する税額に一定のみなし仕入率を乗じた金額を仕入れに含まれる税額とみなすことのできる制度です。消費税の納付税額は、通常は課税売上げに係る消費税額から課税仕入れ等に係る消費税額を差し引いて算出されます(原則課税)。

しかし、基準期間(その課税期間の前々年又は前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下で、届出書を事前に提出している場合には、仕入控除税額を課税売上高の一定割合として計算できる簡易課税制度の適用を受けることができます

この一定割合を「みなし仕入率」といい、以下の6つの業種(卸売業、小売業、製造業等、サービス業等、不動産業、その他の事業)それぞれに定められた仕入率が適用されます。

事業区分 業種 みなし税率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業) 80%
第三種事業 小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く) 70%
第四種事業 その他の事業 60%
第五種事業 サービス業等 50%
第六種事業 不動産業 40%

簡易課税制度のメリット

簡易課税がお得なケース

事業の業態や支出の内容により、節税になる場合があります。課税売上に占める課税仕入の割合がみなし税率よりも低い場合、簡易課税を選択した方が税制上有利になります。

例えば、消費税の計算上、給与については課税仕入れとして控除できません。インターネット事業など、仕入れがほぼ不要で支出の大部分が人件費であるような業態の場合には、みなし仕入率(サービス業なら50%)を適用することで、税負担の軽減が期待できます

経理事務の負担軽減

簡易課税制度を利用することで、仕入れにかかる消費税を細かく管理する必要がなくなるので、手間が省け、事務負担の大幅な軽減が期待できます。

簡易課税制度のデメリット

2年間変更不可

簡易課税制度を選択すると、原則、2年間は実額計算による仕入税額の控除(原則課税)に変更することができません

支出が多い場合は不利になるケースもある

仕入れや設備投資など支出が多い場合には、実額計算による原則課税制度の方が有利になる場合があります。簡易課税制度では控除額はみなし税率で算出されるため、支出額が考慮されない点には注意が必要です。

簡易課税と原則課税の比較

簡易課税が有利になるケース

具体例1)卸売業、課税売上高2000万円、課税仕入高1600万円 ※税抜

原則課税:(2000万円×10%)-(1600万円×10%)=40万円(納税額)

簡易課税:(2000万円×10%)-(2000万円×10%×みなし仕入率 90%)=20万円(納税額)

この事例の場合、課税売上高に占める課税仕入高(80%)<みなし仕入率(90%)であるため、簡易課税を選択した方が有利になります。

原則課税が有利になるケース

具体例2)サービス業、 課税売上高2000万円、課税仕入高1200万円 ※税抜

原則課税:(2000万円×10%)-(1200万円×10%)=80万円(納税額)

簡易課税:(2000万円×10%)-(2000万円×10%×みなし仕入率 50%)=100万円(納税額)

この事例の場合、課税売上高に占める課税仕入高(60%)>みなし仕入率(50%)であるため、原則課税を選択した方が有利になります。

簡易課税制度の手続き

適用しようとする課税期間の開始の日の前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。なお、簡易課税制度選択届出書を提出している場合であっても、基準期間の課税売上高5,000万円を超える場合には、その課税期間については簡易課税制度は適用できないので注意が必要です。

また、簡易課税制度の適用をとりやめる場合には、原則として、やめようとする課税期間の開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があり、課税仕入れ関係の帳簿及び請求書などの保存が必要になります。

まとめ

以上、簡易課税制度の概要やメリット、デメリット等について解説しました。業種や経費の内容によっては、節税対策や事務負担の軽減になる制度です。当法人は税理士法人を保有していますので、判断が難しい場合など、ご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。

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