雇用も節税になる!?所得拡大促進税制を活用しよう
記事作成日 2020/10/14 記事更新日 2023/02/05
1.所得拡大促進税制とは?
所得拡大促進税制を活用しようと言われても、まずは所得拡大促進税制がどういう税制なのか理解ができていないと活用もできないと思います。ということで、所得拡大促進税制についてどのような税制なのかみていきましょう。
所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税から税額控除できる制度をいいます。つまり、一定要件を満たすことができれば、税金を減らしてもらえるという制度です。ここで、所得拡大促進税制を整理すると以下の2つの要件と1つのメリットがある制度となっています。
① 青色申告書を提出している中小企業者等
② 前年度より給与等の支給額を増加
メリット
① 税額控除できる
では、所得拡大促進税制を活用するための要件と活用した時のメリットについてみていきましょう。
2.所得拡大促進税制を活用するための要件は?
まず、一つ目の要件である青色申告書を提出している中小企業者等をみていきましょう。ここには二つポイントがあります。
一つ目のポイントは青色申告書を提出しているというのは、一定水準の記帳を行い、その記帳に基づいて正しい申告をしているということです。ここで一定水準の記帳とは、複式簿記に基づき、記帳されているということです。
もう一つのポイントは中小企業者等です。中小企業者等とは、以下の要件のうち、①及び②又は③を満たす会社となります。
- 資本金の額又は出資金の額が1億円以下
- 大規模法人(=中小企業者等以外の法人)に発行済株式又は出資の総数又は
総額の2分の1以上を直接所有されていない法人 - 複数の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を直接所有されていない法人
もう一つの要件として「前年度より給与等の支給額が増加」ということが要件となっています。この要件が所得拡大促進税制のポイントとなります。なお、所得拡大促進税制は、「通常のケース」と「上乗せのケース」があります。
継続雇用者給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加
【上乗せ】
継続雇用者給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加、かつ、一定の要件を満たす
継続雇用者給与等支給額とは、継続雇用者(前年度の期首から適用年度の期末までの全ての月分の給与等の支給を受けた従業員)に支払った給与等の総額となっています。要するに、継続雇用している従業員の給与の総額を指します。
例えば、前年の継続雇用者に支払った給与等の総額が100百万円であれば、通常のケースであれば1.5%以上の増加が要件であるため、1.5百万円増加する必要があります。つまり、申請する年の継続雇用者に支払った給与等の総額が101.5百万円以上となっていることが要件となります。
また、上乗せ時の要件の中にある一定の要件とは、以下の二つの要件のうち、どちらかの要件を満たしていることをいいます。
- 教育訓練費が前年度比で10%以上増加していること
- 中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けており、経営力向上が確実に行われていること
教育訓練費とは、自社の社員に対して教育訓練等を行わせる費用(外部講師費用、外部施設利用料、研修委託費、外部研修参加費)を指します。なお、対象は自社の従業員が対象となり、役員は対象外となります。
経営力向上計画ですが、こちらは中小企業等に税制優遇や金融支援などを支援してくれる制度となっております。経営力向上計画を作成して、認定されれば支援を受けられるという制度で、その支援の中のメニューの一つに所得拡大促進税制が含まれているということです。
詳細は、【節税】今すぐ経営力向上計画を申請すべき理由!その方法とメリットを解説をご参照ください。
まとめると、通常の場合であれば、青色申告している中小企業が、前年度に継続雇用している従業員に支払った給与が1.5%以上増えている場合に適用できます。また、上乗せの場合であれば、青色申告している中小企業が、前年度に継続雇用している従業員に支払った給与が2.5%以上増えており、教育訓練費が前年比で10%増加、あるいは経営力向上計画の認定を受けることができれば適用できます。
3.所得拡大促進税制を活用することで節税?
次に税額控除できるということですが、法人税が減額されるということです。そこで所得拡大促進税制で受けられる税額控除ですが、以下の通りとなります。
給与総額の前年度からの増加額の15%を税額控除
【上乗せ】
給与総額の前年度からの増加額の25%を税額控除
いずれも上限は調整前法人税額の20%
給与総額ですが、ここでは継続雇用者に限定されず、全ての国内従業員(役員を除く)に支払った給与等の総額を指します。ここで注意すべきポイントは、所得拡大促進税制を適用するときは要件となっていた継続雇用者に絞られず、全従業員が対象となる点です。
以下の例を考えてみましょう。(通常の場合)
前年 | 今年 | |
---|---|---|
継続雇用者に支払った給与等の総額 | 100百万円 | 108百万円 |
全ての従業員に支払った給与等の総額 | 120百万円 | 130百万円 |
上表の例でいくと税額控除の計算に用いるのは全ての従業員に支払った給与等の総額を用いるため、10百万円(=130百万円−120百万円)の増加額の15%が控除されます。つまり、1.5百万円の控除を受けることができます(調整前法人税額が7.5百万円以上)。
4.まとめ
ここまで所得拡大促進税制をみてきましたが、当該税制は継続雇用者への支払った給与が前年比で増加していれば、受けることができる制度となっています。
支払った給与が増加することで、増加分だけ税額控除を受けることができます。つまり、継続雇用者の給与を増加させるか、継続雇用者を新たに雇用することで支払った給与を増加させれば節税することができるのです。
給与を増加させることは利益を減少させる要因となるため、中々行いにくいのですが、当該税制を利用することで支払う税金を減らすことができるため、検討する余地があります。当該税制に興味をお持ちになったら、気軽にご相談ください。
※今回みてきた所得拡大促進税制ですが、
詳細な内容は中小企業庁のHPに記載がありますので、合わせてご確認ください。
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html
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