短期前払費用とは|特例を活用し節税する際の要件と注意点を解説

短期前払費用とは|特例を活用し節税する際の要件と注意点を解説

記事作成日 2020/08/02    記事更新日 2023/02/05

家賃やインターネットのサーバー利用料などの支払いについて、数ヶ月~年間の料金をまとめて支払う場合があります。そのような際、短期前払費用の特例を適用できれば、支払いった金額全額を当期に経費計上することができ、節税につながります

今回はこの短期前払費用の特例活用による節税についてご紹介します。

前払費用について

前払費用とは

そもそも前払費用とは、一定の契約の下、継続的に等質・等量のサービスを受ける場合に、まだそのサービスが提供されていないにも関わらず、支払いをした費用のことです。

例えば、3月決算の法人で、9月末に10月~翌9月までの火災保険料を支払った場合、翌4月~翌9月までの火災保険料は「前払費用」となります。この場合、10月~翌3月までの火災保険料は当期の費用として計上、翌4月~9月までの火災保険料は前払費用として資産計上し、翌期になった段階で資産から費用に振替を行います

短期前払費用とは

上記の前払費用のうち、支払日から1年以内にそのサービスの提供を受けるものを短期前払費用といいます。この短期前払費用は、後述する要件を満たせば、特例として資産ではなく費用として当期の経費に算入することが認められています

こちらは重要性が低い科目については簡便な処理を行ってもよいとする、企業会計の「重要性の原則」に基づく考え方となっています。

短期前払費用の特例活用の要件

短期前払費用の特例を活用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。

1.前払費用であること

前払費用は、

  1. 契約に従って継続的にサービス提供を受けるものである
  2. 等質・等量のサービス提供の対価である
  3. 当期中に支払い済である

これら3つの要件を満たす必要があります。

特に、②について、例えば税理士や弁護士の顧問料は毎月一定額である場合が多いですが、そのサービスの中身は月によって異なるため「等質・等量のサービス」には該当せず、短期前払費用の対象とはならないため注意が必要です。また、雑誌の年間購読料なども、サービスではなくモノの提供に当たるため、短期前払費用の対象外となります。

2.支払日から1年以内にサービス提供を受け終わるものである

「短期」の前払費用であるためには1年以内にサービス提供を受け終わることが条件です。この1年という単位は厳密ではなく、例えば4/1~翌3/31までの期間のサービスを3/25に支払った場合も、「ほぼ1年」とみなされ、短期前払費用の対象となります

3.経理処理方法や支払方法が毎年一定であること

短期前払費用として月払いから年払い等に支払方法を変更した場合は、翌期以降も同様の処理をすることが必要です。

4.売上に対応する費用ではないこと

例えば、不動産業者のようにAから借りた物件をBへ又貸しすることで賃貸料収入を得ている様な場合、Aへ支払う家賃(費用)は、Bから受け取る賃貸料収入(売上)に対応するため、Aへの家賃支払を年払いにしたとしても短期前払費用の特例は受けられません。

短期前払費用の特例活用時の注意点

毎期の一括支払に耐えうる資金繰りが必要

前述のとおり、短期前払費用の特例を活用する場合、経理処理や支払方法が毎年一定であることが要件となります。そのため、翌期になってから資金繰りが悪化した場合でも、当該費用については一括で支払う必要があります。特例の活用を考える際には、毎年ある程度のキャッシュがまとまって出て行くことを想定し、それに耐えうる資金繰りかどうかの確認が重要です。

初年度しか節税効果は無い

導入初年度は、本来資産計上すべき翌期分の費用についても経費算入が認められるという形のため節税効果がありますが、以降は毎期決まったタイミングで1年分の費用計上を行う形になるため、節税効果はありません

「重要性の原則」から逸脱する費用は短期前払費用の特例が認められない

繰り返しになりますが、短期前払費用の特例は、あくまで重要性が低い科目については簡便な処理を行ってもよいとする「重要性の原則」に基づいた考え方です。そのため、営業原資などその事業にとってコアな費用となるものについては、重要性の原則に反するとして短期前払費用の特例は認められません

まとめ

短期前払費用の特例を活用すれば、一定の要件を満たす費用について本来資産計上すべき費用を当期の経費として算入することができ、節税につながります。要件は細かく定められており注意点もあるため、活用の際は税理士に相談しながら処理を進めることをおすすめします。

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